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[S1]【ネタバレ注意】『SHERLOCK/シャーロック』S1-EP1「A Study in Pink/ピンク色の研究」ジョンのセリフ“I don't have to”

BBCドラマ『SHERLOCK/シャーロック』シリーズ1第1話「A Study in Pink/ピンク色の研究」。ジョンのあのセリフについてちょっと喚きたくなったのつらつらメモ。全体の感想(再)はまたそのうち。

※ネタバレ100%です。まだ本編ご覧になっていない方は回れ右を推奨します。

ネタバレ注意

初見時からずーっと気になっていたこのシーン。

ジョンのPTSD、右足がPTSD以外のナニモノでもなかったことが証明された、怪しいタクシーとの追いかけっこ後。221Bに戻ってきたシャーロックとジョンを待ち受けていたのは、シャーロックが情報をよこさないことに業を煮やしたレストレード警部補の<Drugs Bust>。

ピンク・レディがなぜに当の昔に死んだ「Rachel」をダイイングメッセージとして書き残したのかを推理するシャーロック。あれこれネタを出すジョンにちょい八つ当たり。

Sherlock: If you were dying, if you'd been murderd, in your very last few seconds, what would you say?
John: "Please, God, let me live."
Sherlock: Use your imagination!
John: I don't have to.

シャーロック:もし君が死にかけていたら、もし君が殺されようとしていたら、最後のほんの数秒になんて言う?
ジョン:神よ、私を生きさせてください。
シャーロック:想像力を使えよ!
ジョン:必要ないよ

If you wereなんて仮定にしなくても、ジョンは実際にアフガニスタンで左肩を撃たれて死に面したわけで。“Please, God, let me live”はきっと、ジョンがその時に薄れゆく意識の中で本当に思ったことだったのだろうな、と。

あれは想像力を使う必要なんて微塵もないほど、実体験から出てきた言葉のはず。さらには、実際に撃たれた時だけでなく、砲弾が飛び交うカンダハールの前線で何度となく、無意識に口にしていた言葉だったかも…。ジョンだけでなく、彼が陸軍医として助けた/助けられなかった多くの仲間の兵士達も…。

アフガン南部のカンダハールは決戦場と言われることもある重要な場所で、米軍英軍カナダ君オランダ軍など多国籍軍が展開。周辺の州も含んで、ケシ畑撲滅、タリバン掃討、自爆テロetc、英国軍も相当数の死者を出しているらしいエリア。

日々、死と直面し、自らの命だけでなく負傷兵達の命とまで向き合い続けていたジョンには、<想像力>なんて全く不要。想像した言葉ではなく、現実に、実際に耳タコなほど慣れ親しんだ言葉だっただろうと考えると、ジョンの抱える闇の深さ、大きさにちょっと背筋が凍ります。

シャーロックは一見変人に見えますが、ジョンに比べれば何百倍も真っ当な人間。事件解決に私情を挟まないだけで、人が死ぬことに何も感じないわけではないし、死なせてしまうことに悔いを持たないわけでもない。ただたぶん、いくつもの事件を通して不条理な死も見てきたでしょうから、毎回いちいち心を動かしていられないというか、そこまで感情移入する思考回路にしていないというか(苦笑)ソシオパスとか言いながら、彼は人の心を掴むのがとてもうまくて、それを使って情報を引き出すこともしばし。

シャーロックを助ける為なら、急所を躊躇いなく撃ち抜くことができるジョンの方が、シャーロックよりもよーーーーっぽどイカれてるし、アブナイし、暗い!S1-EP3でも、シャーロックを離さなければ撃つと宣言してますしね。

シャーロックとジョン、どちらが躊躇いなく人間に対して引鉄を引けるかと言ったら、ジョンで間違いないでしょう。

一体この人はどんな戦場を見てきたんだ…。と、何度観てもそこで大きな溜息を落とさずにはいられません。

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